研究概要 |
しばしば睡眠中には、鮮明でありありとした夢見体験が出現する。夢は、一晩の睡眠でもまるで何かを目で追いかけているような急速眼球運動が出現するレム睡眠中に多く出現することが知られている。これまでの申請者の研究結果より、急速眼球運動の出現に伴って、夢の情動・記憶要素、運動要素、そして視覚要素の生成に関わる脳部位の賦活が生じることが示された。しかし、急速眼球運動に伴うこれらの脳活動と実際の夢内容の直接的な対応はこれまで検討されていない。そこで本研究では、寝ている被験者に外部から音刺激を与え、主観的体験である夢見体験の時間軸を特定した上で、その際の夢と脳活動の関連を検討することとする。具体的には、1晩に3,4回、レム睡眠が出現する度に被験者を覚醒させ夢見聴取を行い、睡眠中のポリグラフデータ(脳波・眼電図・筋電図)の取得を行い、夢見内容と急速眼球運動に伴う脳電位(P200r,ラムダ様反応)の相関関係を検討する。P200rはその発生源が運動野・頭頂連合野であることから身体運動と情報の統合に関連する活動を反映、ラムダ様反応は発生源が視覚野であることから視覚情報処理を反映すると考えられる。これまで22名の参加者において、実験参加者1人あたり平均4.6±1.3回の夢見聴取を行い、合計92回の聴取から84回の夢見報告を得た。夢見報告率は91.3%だった。夢の内容について、聴覚要素の顕著性があった夢は全体の68.0%、ストーリー性があった夢は全体の54.8%であった。今後はこのデータを基に、夢の内容とレム睡眠中の急速眼運動に関連する脳電位との相関関係を検討する。
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