研究概要 |
平成22年度の研究計画では,自然な場面での顔表情の動的な表出のモーションキャプチャによる計測,時系列顔形状データを幾何学的形態測定学の手法による解析を目標としていた.平成22年度は,高速度カメラを用いたモーションキャプチャシステムを自作し,自然なインタラクション場面での表情表出を幾何学的形態測定学的手法により分析する手法を確立し,この成果を2件の国際会議および1件の国内研究会にて報告した.またこの手法を応用し,インタラクション場面における表情の類似化の程度を評価する手法を構築した.実験の結果,実際に自然な対人場面において表情の類似化が生じることが定量的に示され,これを「対人社会心理学」誌に発表した.また,顔の分析を行う上では,顔の形状の多変量解析の適用が重要となるが,どのような手法が有効かを検討する一環として,直交化により顔形状の性的二型性とそれ以外の要素を分離する手法を用いて性印象と顔形状の関係を検討する研究を行い,その研究はJournal of Experimental Psychology : Human Perception and Performance誌に掲載が決定した.上記のような顔形状の分析手法の向上への試みと並ぶ重要なテーマとして,表情の合成があげられよう.心理学的な検証に耐えうる表情の合成は,さまざまな検証実験を行う上で非常に重要である.本年度は,二次元画像のモーフィング手法として通常用いられるThin Plate Splines(薄板スプライン法)を3次元に拡張し,容易に3次元表情合成をおこなうことができるアプリケーションを開発し,またこれを利用して,日中韓の表情の定量的な分析と合成を行い,学会・研究会で報告した.以上のように,平成22年度は顔の計測,処理,合成に関する基礎的な手法を構築し,研究目標である「複雑な」表情解析の基盤を作り上げることができたと言える.
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