本研究計画は,基本6表情に含まれない「複雑な」表情の時間的・空間的特性を明らかにすることを目指している.平成24年度は,平成22年度・23年度にかけて構築してきた表情計測・分析手法による動的表情の解析を中心に研究を進めた.赤外線モーションキャプチャ装置により取得された時系列的な顔面上のマーカ位置座標データは,4元データとなる(時系列×顔形状×条件×表出者).このような4元データは通常いずれかの元をつぶして解析がなされることが多い.しかし,本研究では拡張主成分分析の一つであるParafacモデルやTuckerモデルを適用することで,4元データをそのまま解析することが可能となる. これまでの実験的な検討の結果,拡張主成分分析手法が,表情の動的因子の抽出に有効な手法であることが示された.またこのような手法は,顔面表情の動的な側面の解析だけでなく,一般的なモーションキャプチャデータの解析においても有効な手法となることが示された(信学技法).平成24年度は,これらの手法の有効性を示す知見の公表に向けて実証的なデータを積み重ねた.また,平成24年度の目標は実験室環境を離れてより自然な状況での表情表出を解析することであった.このためにはマーカレスで機動性の高い(大掛かりなフェイシャルキャプチャ装置を用いない)動的表情計測手法が必要となる.平成24年度は非接触震度センサを用いて表情計測を手法の確立を試み一定の成果を上げた.今後実証的なデータを収集し,表情計測における有効性を示していく必要がある.
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