研究課題/領域番号 |
22730598
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研究機関 | 公益財団法人神経研究所 |
研究代表者 |
阿部 高志 公益財団法人神経研究所, 研究部, 研究員 (00549644)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 睡眠 / 徐波睡眠 / 認知機能 / 眠気 / 覚醒水準 |
研究概要 |
本年度は、徐波睡眠を制限する徐波抑制実験を実施し、取得したデータを解析することで、睡眠の質の低下が認知機能に及ぼす影響を検討した。 心身ともに健康で睡眠障害がない若年健常者 12名(男性、21.8±2.8歳)が実験に参加した。23時から7時の間,徐波抑制負荷により健常者の眠気を亢進させる条件(徐波抑制条件)と、通常通りに睡眠をとる通常睡眠条件を設けた(参加者内比較デザイン)。いずれの条件でも起床後の午前10時からはフランカー課題を用いて反応時間、正反応率、Error-related negativityを計測した。 夜間睡眠における睡眠構造を条件間で比較したところ,覚醒段階と睡眠段階1が徐波抑制条件で有意に増加していた。一方,レム睡眠と総睡眠時間は徐波抑制条件で有意に減少しており,徐波睡眠は減少する傾向にあった。徐波抑制条件において中途覚醒の有意な増加と,徐波睡眠量の減少傾向が認められ,睡眠中の音の呈示が睡眠の質を悪化させたことを確認できた。 認知課題における正反応時間について,条件×刺激の種類 (一致刺激vs 不一致刺激) の分散分析を行ったところ,不一致刺激に対する反応の遅延が示された。正反応率に関しては,不一致刺激に対する正反応率の低下が認められた。ERN/Ne振幅を条件間で比較したところ,有意な差は認められなかった。このことから、エラー検出機能は夜間睡眠の質の低下の影響を受けなかったと考えられる。一方,自らのエラーに対する詳細な主観的評価過程を反映するerror-Positivity (Pe) は,Cz(中心部)で徐波抑制条件における振幅の低下が認められた。Peの発生に関わる複数の脳部位のうち,前頭よりの部位のみが夜間睡眠の質の低下によって影響を受けた可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
睡眠構造操作による認知機能の変化を検討するための実験を完了するとともに、データ解析の大部分を終了しており、交付申請書通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
睡眠構造操作実験で得られたデータを詳細に分析するとともに、実験結果を学会誌上に発表する。また、本研究課題で実験を実施し、学会誌上でも発表を行った部分断眠後の覚醒水準の変化に伴う眼球関連情報に関する研究は、予想以上の進展を示し、眼球関連情報を用いた覚醒水準計測法を確立するための足がかりとなる成果が得られた。今後は、認知機能、覚醒水準に加えて、部分断眠による眼球関連情報の変化をより詳細に検討する必要がある。
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