高校統廃合をめぐる北海道の高校教育の状況について「新たな高校教育に対する指針」導入後の状況に焦点を当て、1.北海道財政と少子化の状況把握、2.高校統廃合の基準とその進行状況の把握、3.地域キャンパス校制度の検討、4.特色のある高校の事例、の4点に関して文献調査と、高校への訪問調査などによる検討を行った。 1999年から2012年にかけて北海道の歳入は約2割減少した。中学校卒業者も30年で半減することが予想される。2006年8月に道教育委員会は「新たな高校教育に関する指針」を提示し、適正学級規模を1学年4学級以上8学級以下として、それ以下の規模の高校で統廃合を行うことを決定した。2015年までに31校の廃校が決定した。 地域部で「(1)1学年21名以上、(2)地域からの通学率が50パーセント以上、(3)近隣の高校から50キロ以内」であれば、"地域キャンパス校"として高校が存続し、"センター校"から"キャンパス校"へと教員が出向き授業を行う制度が導入された。ただ、教員の学校間の移動の負担などの課題を抱え、制度の定着はこれからと思われた。 指針の発表後、地域自治体や高校は、反対運動、特色づくり、生徒数の確保などの対応や支出を迫られた。その一方で統廃合の議論は地域と高校の関係を再考する契機となった。(1)美瑛町美瑛高校の4者協議会(2)上川中学・高校における連携型中高一貫校の試み(3)鷹栖高校における居宅介護従業者養成研修3級課程の取得、(4)常呂高校のワッカ原生花園の保全活動、など特色ある活動を訪問し、聴き取り調査を行った。美瑛高校においては統廃合問題が浮上したことが希薄化していた高校と美瑛町との関係を再考し、新たな関係性を作る契機となった。道立高校と地域市町村の壁を越えた"community-based highschool"と新たに呼ぶべき高校の在り方も模索されており、小・中も含めたcommunity-basedな教員配置や学校運営を今後検討する必要があると思われる。
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