研究課題/領域番号 |
22730603
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
板橋 孝幸 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (00447210)
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キーワード | 日本教育史 / 郷土教育 / 旧制中学校 / 地方教育会 / 農村地域 |
研究概要 |
本年度は、次の2点を中心に研究を進めた。 第1点は、昨年度までの研究を踏まえつつ、学校内のカリキュラム改造から地域社会の教育体制構築へと展開していった農村における郷土教育運動を分析した。先行研究において、昭和戦前期の郷土教育は、国策的な要素や郷土教育連盟の理論が反映された運動であったと位置付けられている。しかし、本研究では地域の教育実態を詳細に検討しながら、農村地域独自の教育体制構築運動であったことを検討した。加えて、学校の創設過程や昭和戦前期以前の史料をさらに収集して、そうした実践が展開できた要因について地域事情も踏まえながら研究を進めた。 第2点は、農村旧制中学校及び小学校で資料収集を行うとともに、第1点目を踏まえて、昭和戦前期に農村で展開された郷土教育運動の動向を検討した。農村の郷土教育運動は、必ずしも文部省が提唱するような「愛郷心愛国心涵養の郷土教育」や郷土教育連盟が主張する「科学的」な郷土認識育成を目指すものではなく、自村の発展のために何をしたらいいかを考え、行動できる人材を養成するものであった。こうした農村郷土教育の意義として、文部省や郷土教育連盟の方針とは異なり、相対的に独自の取り組みを追求していった点を指摘できる。しかし、当時の大きな政策の流れを踏まえると、内務省の教化運動や農林省の経済更生運動に内包される面を持っていた。教員たちが社会教育に関わる役割をより担うようになるにつれ、「地域振興」を目的とした郷土教育運動は、教育の論理から社会改良の論理に転換し、教化運動や経済更生運動と結びつきを強め、体制内化していった点を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査及び文献収集を行い、ある程度必要な資料が揃いつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度までの研究を踏まえて、国策的な動きと地域の教育運動の関係に焦点をあてて農村における郷土教育運動の展開をより精緻化する。教員を統制する機能を持っていたという先行研究の論理を踏まえつつ、抑圧や弾圧などの強権発動をするのではなく、教師・学校・地域の積極性を一定程度調達しつつ、自発的な恭順を引き出す運動として郷土教育が位置付けられる側面も検討する。
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