研究課題/領域番号 |
22730603
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
板橋 孝幸 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (00447210)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 日本教育史 / 郷土教育 / 人材育成 |
研究概要 |
本年度は、農村小中学校に関する資料収集を行うともに、「地域振興」を目指して学校教育と社会教育を結びつけ、村内教育体制を構築していく郷土教育運動を検討した。同運動は、第一義的に必ずしも文部省が提唱するような「愛郷心愛国心涵養の郷土教育」や郷土教育連盟が主張する「科学的」な郷土認識育成を目指すものではなく、自村の発展のために何をしたらいいかを考え、行動できる人材を養成するものであった。こうした昨年度までの研究は1930年前後を中心に研究を進めてきたため、今年度の研究では1930年代後半の時期に焦点をあて、戦時体制が進む中での郷土教育運動について滋賀県を事例に分析を行った。小学校教員が社会教育に関わる役割をより担うようになるにつれ、「地域振興」を目的とした郷土教育運動は、教育の論理から社会改良の論理に転換し、教化運動や経済更生運動と結びつきを強め、体制内化していったことを明らかにした。 文部省も人事異動などで内務省系文部官僚の力が強くなると、愛郷心愛国心の涵養を強調する公民科の理念を軸とした郷土教育を推進するようになる。文部省は全体として、内務省主導の国策的な地方政策・社会教育政策のレールにのることになったといえる。こうした政策的背景を持つ教化運動的要素が強くなるにつれ、地域で展開された活動は次第に翼賛的性格へと傾斜し、戦時体制へ下地を作っていった。先行研究による教員統制の論理を援用すれば、抑圧や弾圧などの強権発動をするのではなく、一定程度、教師・学校・地域の積極性を調達しつつ、自発的な恭順を引き出す運動として、郷土教育が機能していたという点も看取できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、埼玉県・滋賀県における資料の掘り起こしを行い、郷土教育関係資料の収集をした。滋賀県の事例における研究成果は、教育実践開発研究センター研究紀要に執筆した。埼玉県における郷土教育運動については、今後さらに検討を行って成果を報告する予定である。 地域的な教育運動を国の動向とあわせて検討するため、文部省を中心に農林省・内務省の資料も収集して分析を行った。その成果は、日本公民教育学会において報告した。おおむね研究計画を踏まえて、資料収集、学会発表・論文執筆が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度にあたるため、これまで4年間収集してきた資料を整理し、研究の総括を行う。文部省の動向と地域の教育運動の関連についても、成果をまとめていく予定である。
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