研究概要 |
本研究は,幼児の自発的興味を尊重する日本の保育実践の文脈のなかで,幼児がより高度な数量知識を獲得していく過程を解明することを目的とする。平成23年度は,幼児の数量認知の発達と保育者の数量支援について,次の3点を行った。 第1に,数量能力評価(Child Math Assessment:CMA)における幼児の成績・方略の分析を進めた。また,CMAの各領域(数,算術,空間幾何,測定1パターン)について,年長児の数量能力に対する保育者の数章支援の効果を検討した。第2に,日本の保育の文化的特徴をより明確た把握するための比較文化的データとして,米国ニューヨーク州の保育所において,幼児の数量発達と支援に関する保育者へのインタビューおよび保育活動の観察を行った。第3に,先行研究において頻繁に数量要素が埋め込まれていた年長クラスの「製作」「出欠の確認」「ゲーム」の活動に注目し,年少・年中クラスを対象とした先行研究(榊原,2006)との対応づけを試みた。その結果,年少・年中クラスにくらべて,年長クラスでは活動により高い割合で数量要素が含まれたり,より複雑な数的操作を幼児に求めたりする傾向がみられた。ここから日本の保育者は,数量の要素を日常の保育活動に埋め込む形で幼児の数量発達に対する支援を行っているが,その際,幼児の発達に対応する形で数量操作の頻度や複雑さを調整するなど,敏感に数量支援の内容を変化させている可能性が見出された。
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