本研究の目的は,ジョン・デューイの教育思想を現代英米圏の政治哲学・政治思想研究の学術的動向のなかに位置づけなおし,その今日的な意義と射程について再検討しようとするものである。本研究では,とりわけ現代コミュニタリアニズムの政治哲学によるデューイの共同体論的再解釈の可能性とその課題を解明するという視角からこの目的を遂行し,「教育」と「政治」の方法を結ぶ新たな研究領域を開拓する。 研究計画3年間のうちの最終年にあたる本年度は,引き続き文献調査を中心的な方法として,デューイ教育思想の共同体論的再解釈の可能性と課題の解明の作業に着手した。とりわけ年度前半の期間は,前年度の学会等において発表した研究成果とそこで浮き彫りとなった課題を受け継ぎながら,リベラリズムやコミュニタリアニズムなどの現代政治哲学の動向を踏まえて共同体論的再解釈をめぐる周辺議論を射程に収めつつ,デューイ教育思想の解読をおこない,発展的に文献研究を進めていった。 本研究ではこうした成果の一部を教育哲学会編『教育哲学研究』第105号,教育思想史学会編『近代教育フォーラム』第21号,日本デューイ学会編『日本デューイ学会紀要』第53号などの各学会誌において発表した。またこれらの論文発表に加えて,7月には日本カリキュラム学会第23回大会課題研究「民主主義社会の(再)構築に向けたカリキュラム論の探究(1):D.マイヤー著『学校を変える力』の合評を通して」,9月には日本デューイ学会第56回研究大会課題研究「『公衆とその諸問題』再考:現代におけるデューイ「公衆」論の可能性を求めて」のシンポジウム等において研究報告をおこなう機会をえた。そのため,これらの発表準備作業にも携わりながら,研究目的を遂行していった。年度後半の期間は,本研究の進捗状況の確認を実施し,3年間の研究成果を点検しつつ,今後に残された課題を明確化する作業に着手した。
|