1教育行政と教育実践を結びつける教育行政専門職に関する史料収集 教育委員会制度草創期の自治体教育行政機構と学校現場・地域がともに創り上げた教育活動を検証し、発揮された教育行政専門職のリーダーシップと専門性を明らかにするため、任意設置の市町村教育委員会が、早期に2市7町6村に設置されている富山県の史料収集を行った。また、研究計画外ではあったが、新潟県において唯一、任意にて設置された旧青海町(現糸魚川市)の当時の教育委員会の活動に関する史料も同時に収集を進めた。富山県の場合は、任意設置とはいえ、軍政部からの影響が大きかったようである。しかし、設置後の活動からは、少数ではあるが専任の教育長や指導主事を配置し、地域の課題を教育行政に反映させようとする積極性がみてとれる。 2研究の意義と重要性 上記の史料にみられる教育長や指導主事らの活動を、ひろく指導行政と捉え、これを地域の教育をリードする計画づくりと、学校現場での教育実践を結びつける「教育の地方自治」の創出過程だと評価する。これらの教育委員会事務局の活動は、任意設置下にしろ任命制に切り替わって以降にしろ、専門性にもとづいた教育計画づくりは、今日においても非常に重要な意味をもつ。それはすなわち、従来の教育長期計画の策定と、2006年の教育基本法改正による教育振興基本計画の策定を、プロフェッショナルリーダーシップの視点から、教育行政の民衆統制を問い直す材料として用い、抜本的な教育委員会制度改革が目指されている今日において、教育委員会を地域における教育活動の創造拠点として位置づけることを可能にするためである。
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