本研究の目的は、戦後形成された私学制度の再編過程のメカニズムを分析することである。特に、本研究では、戦後私学制度の制度展開期(1970~80年代)と制度再編期(1990年代~現在)の2期間を主な分析対象とすることとなっているが、平成23年度においては、(1)教育政策過程の変容に関する研究、(2)教育研究では軽視されてきた当事者インタビュー、(3)制度変化を引き起こす前段階の私学制度に関する研究、(5)「制度分析」の理論枠組みの再検討を行った。 第1に、教育政策過程の変容に関する研究としては、教育政策過程を規定する要因の複層化という近年の政策・制度環境を確認した上で、構造改革型の教育政治の例として「教育特区」を取り上げ、現状と課題の考察を行った。 第2に、「当事者インタビュー」として、教育政策におけるキーパーソン(元文部官僚2人、現役文部官僚5人、マスメディア関係者1人)に対するヒアリングを実施した。 第3に、制度変化の状況把握として、戦後私学助成制度をめぐる政策過程分析を行った。具体的には、1949年に制定された私学法制定に着目しながら、戦後私学助成制度の構想内容とその形成過程を明らかにした。 第4に、「制度分析」の理論枠組みの再検討の作業として、次の2つの分析を行った。 第1に、戦後私学法制研究の再検討を行い、静態的法制研究から動態的法制研究へと転換することの必要性を指摘した。特に、動態的法制研究の進展のためには、多元主義議論的観点、新制度論的観点、政策科学的観点の3つが不可欠となることを論じた。 第2に、社会科学における新制度論のうち歴史的制度論に着目しながら、制度をめぐる形成・維持・変化に関する理論的枠組みの検討を行った。
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