本研究では、植民地朝鮮における実業教育関連の社会教育施策及び朝鮮民衆による実業教育関連の教育実践やその言説に関する考察を通して、植民地朝鮮における実業教育と社会教育との関係性を明らかにした。当時、朝鮮総督府は「実業補習学校」や「卒業生指導施設」等の実業教育関連の社会教育政策を通して、中等学校への入学競争や就職難を緩和させつつ、青年を農村に残存させ、本来の植民地経営方針を維持していこうとした。一方、いつも厳しい入学競争や就職難に置かれていた朝鮮民衆は自ら実業教育関連の学校や夜学の設立を通して自分たちの生きる道を開拓すると同時に、朝鮮総督府の打ち出す教育政策にある程度便乗しながらも、自分たちの目標や都合に反することや不公平なこと等が起った場合は、強く抵抗し、あるいは要求もしていた。つまり、植民地朝鮮では朝鮮総督府と朝鮮民衆それぞれの目的のために、実業教育関連の社会教育が積極的に取り組まれていたのである。
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