研究概要 |
本研究は,三重県型「学校経営品質」の成果と課題について,理論的・実証的に明らかにすることを目的とする。今年度は,昨年度の研究課題を踏まえて以下のことを行った。(1)校長に対する聞き取り調査、(2)校長に対する質問紙調査(悉皆調査),(3)組織開発の観点からの品質管理論の検討。(1)では,「学校経営品質」に対して肯定的・否定的な立場の校長のそれぞれに聞き取りを行い、「学校経営品質」の現状,効果,課題・問題点の3点から整理した。その結果、「学校経営品質」の全体的な成果として,a.校長や教職員の認識や意識の変革,b.対話を通じた情報の共有,c.三重県全体の教育風土の変革が明らかになった。また,「学校経営品質」の全体的な課題・問題点として、d.教育委員会の導入の仕方に対する懐疑,e.数値目標の明示化に対する懐疑,f.使い勝手に対する懐疑が明らかになった。(2)では,「学校経営品質」実践における,a.工夫・留意点(教職員との対話の重視,教職員への意識づけ、負担を減らす努力、脱形式化・実質化,教職員の主体性や意欲向上の重視など),b.効果(理念の浸透,子ども目線の定着,教師のやる気の向上,学校の目指す方向性の明確化など),c.課題・問題点(多忙感・負担感・時間のなさ,教職員の認識や理解の差,改善への未接続など)についての校長の認識の全体的な特徴が明らかになった。(3)では、(1)と(2)の結果を踏まえて、「学習する組織」論やAI(Appreciative Inquiry)といった一般経営学における新しい組織開発の議論や,欧米の学校経営研究におけるTQMの議論を参考にして,「学校経営品質」の基礎となる品質管理論について理論的検討を行った。そこでは,「学習する組織」を創造するためのツールとしての活用法,および問題解決アプローチではなくAIアプローチとしての「学校経営品質」実践について検討し,今後の「学校経営品質」の実践において示唆的な考え方について考察を加えた。
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