本研究は、カナダの代表的な移民受け入れ都市の学校におけるマイノリティ言語・文化教育の政策・実践を取り上げ、近年の人口変動動向や社会統合原理などの社会状況の変容が、カナダ各地域の多文化教育の実態・あり方にどのような影響を与えているかを検討し、実態を明らかにすることを目的とした。 前年度に実施した現地訪問調査(トロント、ウィニペグ、リッチモンド)及び今年度新たに文献などによって得た情報(バンクーバー)を整理し、カナダの東部、中部、西部の各都市の人口変動を中心とした社会状況の変化との関連性に焦点を当ててマイノリティ言語・文化教育について考察を加えた。その結果を日本比較教育学会年次研究大会で口頭発表し、発表の場で得られた発表内容に対する意見や助言を参考に、研究結果を論文「カナダの初等教育段階のマイノリティ言語教育-「国際言語」としてのプログラム運用の実態-」としてまとめた。 また、本研究で得られた情報をまとめていく過程でカナダにおける研究や教育状況にどのような意義があるかについて多文化教育の研究者から助言を得るため、オタワ、トロント等を訪問した。 カナダにおける特定のマイノリティの言語・文化を扱う教育の位置づけや人口変動など社会状況の影響についての現況を明らかにし、1970年代に世界初の多文化主義を宣言し、長く多文化化の先進国と評価されてきたカナダ社会の現代における多文化教育の法則性を導き出すという研究目的を達成することができた。また、本研究の成果は、外国人住民や国際結婚数の増加等により、教育現場の環境整備や研究の充実が喫緊の課題となっている日本の多文化教育の発展に資する基礎的資料となりうるものである。
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