研究概要 |
本研究は、(1)ユダヤ思想、(2)世紀転換期の「科学と神秘」思想、(3)様相論の思想的系譜という3つの研究対象の軸を作り、「現実‐潜在」関係を思想史的観点から再検討するという課題をもっている。本年度もこの全体構想に従い、(1)に関しては、イスラエル・ヘブライ大学で開催された同志社大学一神教学際研究センター&ヘブライ大学国際シンポジウム(Interpretations of Traditions: Maimonides, Spinoza, Buber, Levinas and the After)にてブーバーに関する研究発表をおこない、イスラエルのユダヤ学研究者と討議および意見交換をするとともにイスラエル国立図書館にて資料・文献調査ををした。また、ドイツのヘッペンハイムのブーバー学会およびハイデルベルク・ユダヤ学大学にて開催された国際会議50 Jahre-Martin-Buber-Bibelへ参加し、ブーバー聖書翻訳に関する最新の研究動向を調査できた。いずれの会議でも国際専門学術誌への寄稿を依頼されるなど、今後の研究の進展に向けて足がかりを得ることができた。また、レヴィナスやベンヤミンに関する文献読解もあわせておこなった。(2)に関しては引き続き関連文献を分析し、その成果の一端を教育思想史学会のコロキアム「教育思想家は科学(Wissenschaft)をどうとらえてきたか」の司会+コメント+報告に反映させた。(3)に関しては京都学派、およびアガンベンの読解を通じて考察を進めた。さらに、「現実‐潜在」関係をめぐる知の現代的展開、およびその教育思想的文脈における意義に関しては、教育哲学会でのコロキアムや国際会議において、ここまで得られた知見の一端を発表し、討議の場で批判的検討を行うことができた。
|