本年度は、和歌山高等商業学校の社会移動に関する機能を検討するため、「和歌山高等商業学校資料」に所蔵される複数の史料に基づき生徒の個人情報のデータベースを構築した。 具体的には、賞罰・入学時の成績・卒業時の成績・就職活動の情報・就職先などを幾つかの史料を解読しつつ、それらを繋ぎ合わせて生徒個々人の一連の情報を構築した(パソコン・エクセルソフトへのデータ入力作業を行う)。あわせて和歌山高等商業学校と比較分析を行うために、多くの高等商業学校・帝国大学の卒業生の就職先などを比較検討し、和歌山高等商業学校の就職動向の特徴を明らかにした。加えて、日中戦争期の就職動向の変化を分析するため、文書史料などを通して、その制度的変化を追った。 さらに、生徒の賞罰と就職動向との関係を検討するために文書史料によって生徒の賞罰のあり方の変遷を分析した。とりわけ、生徒に対する処罰の検討を行い、これが1930~31年を境に変化することが明らかになった。この成果を下に賞罰が生徒の就職にどのように関っているのかを検討した。 生徒の入学から就職までの動向に関して分析することは、高等教育機関の社会移動における役割・機能を明らかにすることになる。その前提としての生徒の個人情報のデータベース化は分析を行う際の重要な資料となり、事例分析の中心となる和歌山高等商業学校の位置づけを行うため他の高等教育機関の動向を見ることは、分析において欠かせない作業となる。これら一連の作業を通して日中戦争期の社会移動に関して学校がどのように関っていたのかを検討した。
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