最終年度として論文の執筆を進めた。 第一に、戦前期日本の経済成長を支えた要因の1つに学校制度の構築があったことは、多くの論者に認められており、 工業教育や商業教育などの学校教育は、人的資本を形成して日本の工業化に寄与していた。こうした労働供給に関する学校の役割を様々な側面から見るため、今までのの研究の成果のひとつとして、1930年代の新規卒業者の労働市場に学校が介在するようになった現象、すなわち、学校の推薦制度の形成・役割・機能の諸側面について検討した。 第二に、日中戦争による戦時経済統制が進む中、上述の学校推薦制度がどのように変容したかを検討した。具体的には、さまざまな文書資料を用いて、卒業生の進路の変化を分析した。戦時統制期においては、これらの動向を検討する資料的制約が大きかったが、断片的な資料をつなげ合わせて生徒の入学から卒業までの動向を把握できるデータベースを構築した。それと同時に政策的な変化を検討する資料の収集と分析を行った。
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