研究課題/領域番号 |
22730620
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
丸橋 静香 島根大学, 教育学部, 准教授 (10325037)
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キーワード | 討議倫理学 / 討議能力 / 子ども |
研究概要 |
子どもと言っても、発達段階は多岐にわたる。そこで、まずは、子どもを言語能力に関する発達段階に応じて区分することを試みた。ここでは、討議の前提となる諸規則について検討しているアレクセイや、言語能力に関する発達心理学の知見を援用した。アレクセイや発達心理学の知見に基づいて、子どもは、言葉を話すことができない子ども(<子ども1>)、少しは話すことができるが討議能力はない子ども(<子ども2>)、討議能力はあるが討議対象となるテーマについて知識が不足する子ども(<子ども3>)、の三段階に分けられた。 第一に<子ども1>との討議については、発話できない重度障がいを負った新生児の利益をどのように保障できるかについて考察しているベーラーの議論を手がかりにした。ベーラーはアーペルの二段階に構想された討議倫理学を継承し、この問題に取り組んでいる。 第二には、<子ども2>との討議を可能とする方法について考えた。ここでは、言語能力が崩壊しつつある認知症の患者とのコミュニケーションに討議倫理学の発想を適用した研究を参考にした。ここでは、代理討議をするにしても、どのようなかかわりにおいて、当事者の意思や関心を把握することができるかについて明らかにした。 第三には、討議能力はすでに有した<子ども3>との討議を実現する方法について考えた。ここでは、科学技術に関する専門家-素人の討議(コンセンサス会議)実践を手がかりに、知識格差をどのように解消するかということを主な問題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上述した研究結果は概ね得られたが、9月出産のため、8月より出産・育児のため休業をしたため、学会発表を行ったり、論文化することができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
ハーバーマスの討議倫理学構想における、(1)討議を可能にする基準的言語能力および、(2)その発達段階についての考察を詳細に検討する。(1)については、これまで教育学においてはあまり検討が加えられておらず、また(2)の検討を踏まえたうえでの(2)についての分析についての研究も見当たらない。これらの考察によって、大人-子ども間の討議を可能にする方法、さらには子どもの討議能力を向上させる働きかけを明らかすることが可能になると考えている。
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