研究課題/領域番号 |
22730620
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
丸橋 静香 島根大学, 教育学部, 准教授 (10325037)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ハーバーマス / 討議 / 非対称性 / 子ども / 発達段階 |
研究概要 |
ハーバーマスの討議概念は、大人同士を想定しているため、弱者の声を拾う構想としては不十分である。そのため、平成24年度の研究では、主に子どもを想定しながら、討議能力/言語能力の発達に応じて、大人-子ども間の討議を可能にする方策について考察した。平成24年度では、それを論文「大人-子ども間の討議を実現する方法について-言語能力の発達段階に即して-」(『教育学研究ジャーナル』(中国四国教育学会)(査読あり)第11号,11-20頁)にまとめた。子どもを社会的世界が開けていない段階(子ども1)、社会的世界が開けつつある段階(子ども2)、社会的世界が開けているがまだそれを相対化できない段階(子ども3)の三段階に区分し、それぞれの段階に適用する討議ルール、討議への導入の仕方、合意形成のはかり方についての、大人(教師)の働きかけの留意点を明らかにした。 なお、平成24年度の前半は育児休業を取得していたため、平成24年度分の研究は平成25年にも継続して行った。平成25年度には、発達段階に応じた大人と子どもの討議について、学校教育の道徳教育の場面を想定しながら、より具体的な指導方法を考察した。その結果は、論文「市民育成としての道徳教育1 -ハーバーマスの討議理論を手がかりとした話し合いの指導方法」(丸山恭司編『道徳教育指導論』協同出版、平成26年、69-79頁)にまとめた。この論文では、上記の指導上の留意点に加え、討議において重要な論拠整理の個人作業についても言及した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハーバーマスのコミュニケーション理論が大人同士のそれを想定しており、したがって子どもの声をどのように拾うかという方法論についての研究は、素朴なテーマであり、重要なテーマであるが、これまで正面から論じられてこなかった。ここに言語能力で子どもの発達段階を区分し、その段階ごとの討議指導論を実践的に論じ得たのな収穫であったと思う。当初の研究目的もこの点で達成しえている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究成果の論文では、大人と子どもの討議の場面を、学校の話し合い活動を想定しながら論じた。しかし、学校場面には話し合いを阻害する・あるいは負の影響を及ぼす、権力関係が多かれ少なかれ存在している。この点を考慮しなければ、実効性のある話し合い指導に関する研究にはならない。それゆえ、この点を推進していきたい。
|