研究概要 |
本研究の目的は,「保育の質」の保障が叫ばれる昨今の状況において,保育の質を保育所・幼稚園で評価するために,保育現場における保育カンファレンスの分析手法の開発と,その有効性を検討することであった。 平成23年度は、平成22年度に開発した保育記録の様式の活用と保育カンファレンスの分析について、保育現場での活用をもとに検討を行った。 第1に、ニュージーランドの就学前教育の評価であるラーニングストーリマを参考に開発した保育記録の様式について、保育者の省察を促しプロセスの質を高める効果が見られることが示唆された。保育の中で子どもの姿とともにその都度の保育者の反省も付記するティーチャーズボイスを要した記録を使用することで、保育記録中に保育の振り返りが現れるとともに、保育カンファレンスでも保育プロセスの議論が活発になされるようになった。しかし、簡略化した手続きで進める方法については課題となった。これは、保育の質の保障には、「質」ではなく、「意味生成」の概念が不可欠とされるからであう(Dahlbelg, 2007)。子どもの姿にどのような意味を見出していくかは、やはり時間をかけた議論が重要であることがわかった。 第2に、保育カンファレンスの議論をテキストマイニングで可視化する方法の検討については、前期、後期で同じテーマで話し合いをした議論の結果をテキストマイニングで分析することにより、保育や子どもに対する意識の違いが可視化でき、保育の振り返り、改善につながることがわかった。すなわち、一定の期間ごとに共通のテーマで議論を積むことが保育の質の向上に寄与することが考えられる。このように、可視化したものを園の成果として蓄積することが大切になるだろう。
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