研究課題/領域番号 |
22730626
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
高橋 哲 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10511884)
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キーワード | 新自由主義 / 教員法制 / 教員団体 / 教職の専門性 / アメリカ合衆国 / オバマ政権 / テニュア法 / 教育労働法 |
研究概要 |
研究計画の2年目となる本年度は、前年度までに明らかにしてきた教育労働法制改革の分析をもとに、米国で展開されている新自由主義教育改革との関連において、教員法制改革の全体像を明らかにすることを目的としてきた。 具体的な研究作業としては、2002年に制定された連邦初等中等教育法の改正法である「どの子も置き去りにしない法」(以下、NCLB法)における教員関連条項に着目し、特に(1)「質の高い教員(highly qualified teachers)」条項による教員免許の引き上げ義務化について、ならびに、(2)州統一学力テストを中心とするアカウンタビリティ条項が教員の身分保障に与える影響について検討を行った。従来、事実上の終身雇用権である「テニュア」を取得した教員を解雇するには、それに相応する正当事由(just cause)の存在と、本人への聴聞等をふまえた分厚いデュープロセスが前提とされてきた。しかしながら、NCLB法の要請する「質の高い教員」の基準は、従来とは異なる教員の解雇事由を示すものであり、その身分保障に甚大な影響を及ぼしうることが所見された。さらに、オバマ政権の誕生のもと、教育政策の目玉とされた「頂点への競争(Race to the Top)」プログラムの分析を行い、プログラムの導入が教員法制に与える影響について検討した。連邦教育省が設定する選考基準(selection criteria)のもと、各州はNCLB法を法的根拠とする学力テストを通じたアカウンタビリティの仕組みを強化するとともに、この成果を教員の待遇に反映させるため、教育労働法やテニュア法を改正し、教員の労働基本権と身分保障を弱体化する立法改革を行っていることを州法分析により明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究対象としていた米国における教育改革と、これに関連する教員法制改革については、2002年のNLCB法における教員関連条項、ならびに、オバマ政権下の教員政策について全体像を明らかにしつつあるため、おおむね計画通りに遂行されている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究計画においては、これまで明らかにしてきた米国の教員法制改革と日本の動向との比較研究を予定していたが、米国における教員法制改革が現在もなお進展している状況にあるため、これらの動向についてさらに追跡調査をおこなう必要がある。このため、顕著な教員法制改革が行われている州、学区における現地調査を本年度も行う予定である。また、当初の予定とされていた日本における教員法制改革についても、公務員法制にもとづく身分保障と給与法制の仕組みを中心に分析を行い、米国の改革動向からみた特殊性を明らかにする。
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