研究課題/領域番号 |
22730628
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
須田 将司 東洋大学, 文学部, 講師 (00549678)
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キーワード | 報徳教育 / 農村地域社会学校 / 児童常会 / 福沢プラン / 石山脩平 / コミュニティ・スクール |
研究概要 |
本研究は、これまで教育史研究で明らかとされてこなかった報徳教育の理論・実践の解明のみならず、それが戦後新教育で着目されたプラグマティズムやコミュニティ・スクール論へと接続していった点に着目し、その理論の形成過程を昭和期教育史上に位置付けようとするものである。 そのため、第二年次にあたる本年度は、学会発表や神奈川県および富山県の学校文書・家文書・地域資料の探索を行い、以下のような成果を得た。 1、戦前期の福沢小学校・国民学校の報徳教育の実相解明 福沢小学校所蔵資料の調査を改めて行い、これまで不明確であった1938年前後の動向を把握するとともに、米山要助校長と後任の小沢永蔵校長の時代に、「生活即教育」がいかに〔生活即錬成〕へと展開したのかをまとめ、学会発表・査読付学会誌への掲載との結果を得た。 2、富山県の報徳教育実践校の現地調査 米山要助校長とも交流のあった富山県における1934年前後の報徳教育実践について、現地調査により学校日誌や実践記録などを発見した。これは(1)と関連し、昭和戦前期における報徳教育の創出を解明する基礎資料であり、今後神奈川県・富山県の比較研究をする準備が整った。 3、〔井上喜一郎文書〕の発掘 「福沢プラン」を支えた井上喜一郎校長の残した書庫の調査に入り、これまで未発見であった1946年度内の実践記録や論考などを発見することができた。これにより、敗戦直後から「福沢プラン」開始までの空白期における報徳教育から新教育への「転回」が明らかとなり、戦前以来の母子常会が戦後の民主教育へと受け継がれていった理論的根拠を捉えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が課題とした戦前の報徳教育から戦後新教育への「転回」について、現在までに前者にあたる報徳教育の実相解明が順調に進展し、後者に関しても〔井上喜一郎文書〕の発掘により大いに成果を得ている。「転回」に関し、計画時に挙げた右山脩平ら教育学者の影響については若干、史料的根拠を把握しかねている部分があるものの、総じて順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後、(1)昭和戦前期に報徳教育の創出過程のより一層の明確化(富山県の事例検討含む)、(2)戦後「福沢プラン」に臨む井上喜一郎校長の理論形成の2点に焦点化して研究を推進していく予定である。 本研究の当初には(2)に力点を置いていたが、その前提条件である(1)の解明が優先課題であると認識するに至り、(1)に力点を移して実践や教育政策への影響も検討課題に含めていく。(2)は新発見の〔井上喜一郎文書〕に着目し、石山脩平ら教育学者らの影響を分析することで研究の進展を図っていく。
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