本研究では、これまで多様な学問分野から参照されてきた西田幾多郎のテクストを、教育学の分野から人間形成論として読解することを試みた。その研究成果は三つに分節化できる。1.木村敏(精神医学)における西田哲学の受容に着目し、教育学的「自立/自律」概念を再検討した。2.ドナルド・ショーンの専門家論を媒介として、西田の「行為的直観」概念とマイケル・ポランニーの「暗黙知」概念との共通性を指摘し、教師の実践知への西田哲学からのアプローチを試みた。3.西田の遺墨のうち松本厚(ギリシア哲学)に贈与されたと推定される作品一点の由来を探究し、西田による書の制作と贈与の意義について人間形成論的観点から考察した。
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