本研究の目的は、米国学生支援における学生スタッフの支援参画を巡り、専門職団体が展開した議論やその帰結について分析を行うことを通して、学生スタッフの支援参画の意義や運用上の課題を解明することである。具体的には、第一に雑誌記事の検討を通じた学生スタッフの支援参画に関する学生担当職の言説分析、第二に議事録等の検討を通じた専門職団体における議論とその帰結に関する分析を課題としていた。 研究の初年度に当たる平成22年度は、特に第一の課題を中心に研究を進める予定であったが、雑誌記事の量が想定以上に膨大であったことから、収集と読み込みの作業は途上である。他方で、第二の課題に係る作業は予定以上に進み、専門職団体等(CAS、NASPA、ACPA)の会議議事録の収集を終え、当時の関係者であるスティーブン・エンダー氏に対するインタビューを実施した。その結果、学生スタッフの支援参画を巡っては、取り組みをコントロールするための極めて詳細な基準の策定が検討されていたこと、基準の必要性に対するコンセンサスが形成されながらも、結果として策定された基準は簡略なものになったこと、などの諸点が明らかとなった。これらの成果の一部は、日本教育学会において報告したところである。 なお、学会発表を通じて、上記基準の策定について議論がなされたCASという団体に対する理解は、日本国内では十分ではないことが再認識された。それゆえ、当初研究計画の中では予定されていなかったものの、必要な前提的作業として、CASやCASが定める基準の性格について改めて整理をしたうえで、日本教育制度学会において発表を行った。 次年度については、雑誌記事の収集と分析を中心に作業を進め、当時学生スタッフを巡って指摘されていた問題群を、支援領域別・年代別などの観点から明らかにする予定である。
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