本研究の目的は、1900年代から1920年代における保育記録の成立と変容の過程を検討し、保育者における保育実践の意味の変遷を明らかにすることにある。そのために2011年度は以下の作業を行なった。 (1)1900年代から1930年代にかけて雑誌『婦人と子ども』『幼児教育』『幼児の教育』に掲載された保育者による記事を網羅的に収集し検討を行なった。その結果、課業や子どもの遊びを保育として記述する保育者の語り口が1910年頃に成立していること、東京女子高等師範学校附属幼稚園では1920年代の実験的な模索の時期に保育を出来事として記述する実践記録の様式が成立していること、課業や遊びに保育が見出される一方で子どもの問題への対応が保育者にとって重要な仕事であり続けていたことが明らかになった。以上の成果は論文「保育記録の成立と変容」として発表準備中である。 (2)大阪府の愛珠幼稚園の1900年代の保育日誌と日誌を収集した。 (3)日本の児童研究の成立期において、とりわけその保育への導入に寄与した松本孝次郎について、著書と『児童研究』『教育壇』『教育実験界』に発表された雑誌論文の収集を行なった。その検討については現在作業中である。 (4)日本の児童研究に関する先行研究の収集と整理を行なった。
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