研究課題/領域番号 |
22730633
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
浅井 幸子 和光大学, 現代人間学部, 准教授 (30361596)
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キーワード | 保育記録 / 保育者 / 保育史 / 新教育 / 幼稚園 / 児童研究 |
研究概要 |
本研究は、1900年代から1920年代の保育記録を、その語りの様式に着目して検討を行い、保育活動の意味づけの歴史的な基盤を明らかにすることを目的としている。その際に「児童研究」および「新教育」の国際的な動向に着目する。以上の研究目的に即して、平成23年度は以下の作業を行った。(1)昨年度収集を行った松本孝次郎の雑誌論文の検討を行うとともに、新たに松本の著書の収集と検討を行った。現在のところ、以下のような知見が得られている。松本は1989年の『児童研究』の創刊に携わり、日本における児童研究の成立において高島平三郎とともに中心的な役割を果たした。幼稚園に深い関心をよせ、幼児教育への提言を多く行ったほか、保育者団体フレーベル会の幼児研究を指導した点で本研究において重要である。松本の児童研究と幼稚園教育のかかわりについては、幼稚園教育の意義に関する発言、幼稚園教育を生態学的に適切なものにすることに関する児童研究の知見に基づいた助言、フレーベル会の研究における児童観察の導入という三点から捉えることができる。なお、松本の児童研究とその幼稚園教育における意義については、継続して検討中である。(2)初期の雑誌『児童研究』の精読を行い、高島や塚原をはじめとする松本以外の児童研究者について、子どもに関するどのような知見を生み出していたか、それに基づいてどのような教育への提言を行っていたかを検討した。松本の児童研究を特徴づけるために、ここから得られた知見を活用する予定である。(3)東京女子高等師範学校附属幼稚園における保育記録の展開の再検討を行い、以前の研究成果とあわせて、「保育記録の成立と変容-『婦人と子ども』を中心に」(太田素子・浅井幸子編『保育と家庭教育の誕生』藤原書店、2012年2月、93-143頁)として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本における児童研究の展開に関する先行研究が想定よりも少なかった。とりわけ幼児教育に深くかかわった松本孝次郎については、彼自身の研究が満州への移住によって途上で挫折していることもあって、ほとんど研究の蓄積がないという状況にある。そのため、保育記録と児童研究とのかかわりを検討する以前に、松本の業績の網羅的な収集とその意義の検討を行う必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、保育記録の歴史的な展開の検討にある。児童研究はその変容をもたらした重要な要素の」つとして捉えている。しかし児童研究にかんする先行研究が不十分である以上、児童研究そのものを研究することも本研究の推進にとって必要であると考えている。保育記録の検討と並行して、児童研究の歴史的な意義の検討を行っていきたいと考えている。
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