研究課題/領域番号 |
22730637
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研究機関 | 浜松学院大学 |
研究代表者 |
緩利 誠 浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 准教授 (80509406)
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キーワード | アセスメント / 知能検査 / カリキュラム / 個別化・個性化教育 / 幼児教育 / 環境構成論 / 脳科学 |
研究概要 |
平成23年度は教育学者・教育実践者による脳科学への期待と学校カリキュラムへの応用方法の解明にとりかかった。研究の結果、次の点が明らかになった。まず、学校カリキュラムに脳科学の知見を積極的に取り入れてきた分野の一つに特別支援教育があり、特にアセスメントの方法にその成果が具現化されていることを突き止めた。次いで、従来から特別支援教育をはじめとする学校教育と強い接点を持ちながら利用されてきた知能検査を取り上げ、「差別と選別の道具的利用」という批判に対して、心理学が脳科学の知見を取り入れながら、どのように改善を試みてきたのかを分析した。分析の結果、知能検査を用いたアセスメントが、(1)目的:「障害/才能の診断」から「ニーズの特定」のためのアセスメントへ、(2)方法:全般的・一般的な知能の測定による「個人間差」の把握からプロフィール分析に基づく「個人内差」を理解するアセスメントへ、また、Curriculum-freeからCurriculum-referencedアセスメントへ、(3)結果の利用:「欠陥モデル」による対応から「成長モデル」による対応へ、と進展を遂げてきたことを明らかにし、その根底には「賢いアセスメント」の哲学があることを指摘した。また、今後の展望として、特別支援教育で多く用いられる知能検査等のアセスメント手法が子どもの特性理解に留まりがちであることの限界について述べ、環境との相互作用説に立ち、アセスメントの対象をカリキュラムに移すべきであるという提言を行った。その際に、日本で独自に発展を遂げてきた個別化・個性化教育や幼児教育の蓄積から学ぶことが多く、そこでの実践を脳科学的知見と結びつけて論じることの有用性を明らかにした。これらの成果をもとに、今後、研究を進展させることにより、脳科学の見地から学校カリキュラムの画一性を問い直し、根拠(evidence)に基づきながらカリキュラムの個別化・個性化を図る方法について理論的基盤を与えることが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
必要な資料は収集できており、研究課題に照らして、それらの分析作業を継続的に行っている。論文等の研究発表数が少ないのが課題であり、論文等の形でまとめていない分析結果があるため、平成24年度は積極的に発表していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
実践に裏づけられた理論を構築するために、今後は学校現場におけるフィールド調査、および主要人物へのインタビュー調査を行うことにより、そこで収集したデータをもとに理論補強を図る予定である。 これまでの研究の進捗により、当初予定していたフィールド先を変更し、平成23年度中旬から新たなフィールド先を模索してきた。新たなフィールド先は決定しており、交渉を進めた結果、調査ができる準備は整い、すでに着手し始めている。当初の計画よりもやや遅れたものの、研究を遂行する上で支障をきたすものではない。
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