平成22年度は、主に「文検」手工科の制度的変遷について、『官報』や『文部省年報』等の公刊資料および『手工教育』および『文検世界』などの教育関係雑誌を用いて、「文検」そのものの制度や試験日程等に関する制度史をたどり、「文検」手工科がどのような歴史的変遷を経て実施されてきたかを分析した。 その結果、「文検」手工科は、師範学校の学科課程に手工科が存続していた1886年から1942年までの間に、少なくとも47回実施されていた。 そして、この試験制度には、徐々に発展的傾向があることを指摘できた。「文検」手工科が実施され始めた頃は、試験は本試験のみの1段階方式で行われていたけども、1905年から、手工科の試験も予備試験および本試験の2段階方式で行われるようになった。また、試験内容の点においても、手工科に直接的に関わるものとして、「教授法」と「実地」が受験生に課せられていたけれども、1918年からは、「口述」の内容が加えられた。さらに、手工科だけでなく、「教育大意」や「国民道徳要領」も課せられた。 こうした試験制度の整備・発展が、受験者数の増加にもつながり、「文検」手工科が継続的・発展的に営まれていくことになったと考えられた。
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