最終年度に当たり、口頭発表2件、ジャーナル論文2件(いずれも掲載)、研究書論文1件、一般書論文1件を発表した。 3月には研究成果最終報告書を刊行した。その内容は以下の通りである。 第1章では、生活綴方・作文教育における現代的課題について、戦後の史的展開をふまえて明らかにした。第2、3章では、現代の生活綴方・作文教育において重視されている力とその指導に関する包括的な分析を試みた。具体的には、現代の生活綴方における生活と表現と集団の結びつき、話し合うことと読みあうことを通じた子どもたちの表現と集団の成長について検討した。なお、子どもたちの作品については、個人情報保護を行った上で、できる限り省略せずに収めた。これは、生活綴方における教材とも言える作品の内容について正確に記すことが、実践分析の科学性の成立に不可欠だと考えたためである。第4、5章では、学級での学習に困難がある子どもの指導と生活綴方について、特にリアリズムと目標設定の観点から論じた。学習に困難がある子どもが学級に含まれる場合、教師は子どもに獲得してほしい力について修正を迫られる必要が通常よりも大きいからである。 第6、7、8、9章では、それぞれ低学年、中学年、高学年、中学校の実践を取り上げ、各学年において重視する力と指導の特徴を明らかにすることを試みた。以上の検討をふまえて、第10章では子どもの作品から見える発達的特徴と指導上の留意点について予備的考察を行った。なお、補論として、戦前の生活綴方と生活指導論について検討を加え、現代における生き方の指導(キャリア教育)について示唆を得た。 さらに、「京都綴方の会 京都市つづり方の会 その歴史」年表(2012.1.2)を収めた。全国規模のサークルだけではなく、地域サークルの動向を記録していくことは、戦後の生活綴方・作文教育史を明らかにしていくうえで重要だと考えたためである。
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