研究概要 |
ベルリン陶冶史研究図書館所蔵の通称ベルリン遺稿(BN, Berliner Nachlass; Deutsches Institut fuer internationale paedagogische Forschung. Bibliothek fuer bildungsgeschichtliche Forschung[DIPF.BBF]/ Archiv Beschhtand der frueheren Akademie der paedagogischen Wissenschaften[Archiv. APWA] Friedrich Froebel)、特に1812年から1816年にかけて記述された日記類の読解により、以下のことが判明した。 先行研究において、1812年の球体法則観に散見される“MW”という略記が意味するものは数学と推測されてきたが、日記における記述からMは男性(Mann)、Wは女性(Weib)を示すことが判明した(BN 277)。このことから想起されるのは、リンネ植物学に展開されている「婚姻(Ehe)」という概念である。リンネ植物学における婚姻とは、花の開花を指し、開花時の雄しべと雌しべの様態によって植物分類をなした。フレーベルは1828年に自然諸学教授の構想として「植物学構想」(BN 202)を残している。そこにはリンネ植物学そのものを教授することが前提となっている。 フレーベルの球体法則観は人間の諸力がどのように展開しうるかをも試論している。そこに男性・女性・婚姻というアナロジーを用い、実在するものの法則性、特に極性による生成と存続、消滅の過程を投影しようとした。このアナロジーから、西洋哲学史上の、新プラトン主義の系譜にそって人間本性の流出説の提唱者とされてきたフレーベルの思想に新たな視座が提供されたと考える。
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