保育・幼稚園教育において、安心・信頼を基盤として、自発的な遊びによる環境との相互作用の中で子どもの心身の発達を促すことが重視されている(文部科学省、2008;厚生労働省、2008)。実際の現場でも、様々な自由遊びにおいて園児の社会性・感性・情緒等の発達を安全・適切に援助するため、視覚的注意による「目配り」が重要な役割を果たしている。しかしながら、従来この「目配り」については経験則によって語られることが多く、客観的・定量的な検討はほとんど行われてこなかった。本研究では、現職の専門職と幼稚園教諭・保育士養成課程の学生の視線移動パタンを比較することで、現職者特有の「目配り」を視線移動のパタンとして定量化し、科学的な専門職養成プログラムに寄与することを目的とした。22年度に行った実験により、一定の経験のある現職者は、学生に比べ、より多く視線を動かしており、また陰になるなど見えにくい場所に対してより注意を向けていることが示された。したがって、保育・幼児教育の現場においても、園児の事故を可能な限り未然に防止するための視覚的注意に対して、現場経験が一定の影響をもつことが示唆している。今後、更に様々な保育場面について詳細に検討を加えることで、従来の経験的・対処的伝達による教育から、科学的見地に立った形式知・子どもの安全に関するデータベース化による専門職養成プログラムの開発へと発展させることが期待される。
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