研究課題/領域番号 |
22730651
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 栄一 東北大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (50370078)
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キーワード | 地方分権 / 政府間関係 / 首長 / 地方議会 / 地方政治 / 教育行政 |
研究概要 |
当該年度に実施した研究の成果としては、以下の3点をあげることができる。第1に、論文「市町村公立学校施設整備事業に対する首長の影響力-教育政策の政治学的分析-」としてまとめたものである。この研究成果は、地方分権改革が実行された2000年代以前についての分析結果を論文にしたものである。従来の地方分権研究の問題点の一つに、それ以前の動向を考慮に入れないか適切に把握せずに地方分権改革の影響を析出しようと試みていたことが指摘できる。これに対して、この研究では、地方分権改革以前の時期であっても首長が教育政策に影響力を行使することは可能であったことを指摘し、地方分権改革によって変化したのは、その影響力行使の対象となる施策が拡大したことを明らかにした。第2に、論文「方法としての比較を用いた教育行政学のリノベーション」としてまとめたものである。この論文は、教育行政学の新たな分析方法論を提示することを目的とした招待(査読)論文である。本研究の成果として、特定のイベント(例:地方分権改革)のインパクトを分析するためには、その前後の時期を分析対象とする「時系列分析」もしくは「改革前後の比較分析」が必要であることを、教育行政学の近接学問群(政治学、公共政策学等)をレビューしつつ主張したことがあげられる。従来、質的研究については比較研究を用いて因果関係の析出を図るべきであると指摘されてきたのに対して、本論文では量的研究と質的研究を包含する比較分析の方法論を提示した点が意義ある点である。第3に、論文「分権改革と学校組織の変容」としてまとめた成果がある。この論文の意義は、地方分権改革のインパクトが及ぶと想定される範囲を拡張したことにある。従来は地方政治、政府間関係にとどまっていたが、それを学校経営や教職員の行動・認知・感情にまで拡張した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の「研究の目的」で記しためは、「政治家(首長、議員)に焦点を当て、自治体の教育行政改革の導入・実施過程とその後の自治体の政治構造と政府間関係の変化を実証的に分析する」ことである。現在までに当初想定していた特徴的な事例(自治体)の分析が終了している。今後、一般化を進めていくことになる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、事例分析を踏まえた一般化、理論化を行うことがある。現在、そのための予備的作業として、政治学における公共政策の分析枠組の一つである「政策共同体論」の摂取を行っているところである。これに関連した教育学の先行研究として地方政治と教育の関わりや、教育行政に対する教員(集団)の影響力行使に関する事例分析を収集している。
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