本研究では、調査対象が学校(学級)に属する児童生徒である場合のように、その構造が階層的である学習に関するテストについての既存のデータの再分析を行う。その際には、分析モデルについて、上記のようなデータの階層性とカリキュラムの実施状況等について何らかの形で考慮できるように拡張されたモデルを用いる。本研究は、カリキュラムの実施状況等の違いを考慮した場合と考慮しなかった場合での分析結果の異同等を示し、分析モデルの妥当性について検討することを主に目指すものである。 本年度は、全国規模で児童生徒を抽出して行われた学力に関するテストにおける各項目の内容が、当該調査の実施時の学年以前に履修済みと考えられる場合と、実施時の学年で履修されると考えられる場合で、各項目の難しさに関する母数について、学校間レベルでの散らばりに違いが見られるかを検討する研究を行っている。 仮説としては、学校に属する児童生徒を対象としたテストにおいて、各項目の内容が前年度までに履修済みであるものより、実施時の学年時に履修されるものの方が、項目の難しさに関する母数について、学校間レベルでの散らばりが大きいであろうということが挙げられる。これは、前者よりも後者の方が、調査実施時期での履修状況についても学校間レベルでの散らばりが大きい可能性が高いためである。 このことを検討するために、学校間レベルでの各項目の独自分散を推定できる既存のマルチレベルのカテゴリカル因子分析モデルを用いて、上記の特徴をもった実データの分析を部分的に行った。
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