本年度は英国の教育政策についての関連文献を収集し、現在のシティズンシップ教育政策および関連する教育政策について研究を行なった。この政策分析をもとにした論文は学術誌『国際理解教育』に掲載が決定している。加えて、教育政策および教育実践についての現地調査として、Bradford Academy、King James School、Kettlethorpe High Schoolの三校を訪問し、教員へのインタビューや授業観察などを通してシティズンシップ教育の実践についての調査を行なったほか、政権交代の影響についても教員に聞き取り調査を実施した。日本国内でもシティズンシップに関係する情報・資料の収集を行ない、中でも3月のヨーク大学のデイビス氏やハリソン氏らの訪日の際には、政府からの予算の動向などシティズンシップ教育を取り巻く環境の変化について情報を得ることができた。 英国では平成22年5月の総選挙で政権が交代したのに伴い「子ども・学校・家族省」が廃止され、「教育省」として再編成されるなど、今年度は教育政策においても大きな変更が次々と発表された。そのため、本年度の教育省訪問は一旦延期とし、研究活動を教育政策の分析と現地調査を中心に研究活動を中心とするなど、研究計画には若干の変更が必要となった。政権交代後の教育政策にはまだ不確定要素が多く、英国の教育関係者も今後の動向を予測できかねている状況だが、本年度の研究、特に現地調査を通じて政策過渡期の教育現場の情報を多く得られたのはかえって貴重な成果となった。
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