研究課題/領域番号 |
22730661
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北山 夕華 名古屋大学, 国際交流協力推進本部, 特任講師 (30547790)
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キーワード | シティズンシップ教育 / 社会統合 / 国民国家 / 包摂 / 排除 / イングランド / スコットランド / 多文化社会 |
研究概要 |
本年度は、6月にイングランドとスコットランドを訪問し、調査を行った。スコットランドでは教育当局に当たるLeaming and Teaching Scotlandの本部を訪れ、シティズンシップ教育や人権教育の実施を担当しているNickMorgan氏に実践状況についての聞き取り調査を実施した。加えて、シティズンシップ教育の実施、特に教員研修の面で貢献している団体として氏から紹介のあった英国赤十字とアムネスティーの事務所を訪問し、担当者への聞き取りのほか、教員研修関係とシティズンシップ教育向けの資料などの収集を行った。また、ロンドン大学Birkbeck Collegeで行われたAmual Confbrence of International Centre for Education for Democratic Citizenshipに参加し日本の高校生の市民的参加について発表したほか、シティズンシップ教育研究者との情報交換や資料収集を行った。 本年度は昨年度から引き続きイングランドとスコットランドの教育政策の動向について研究を進めたほか、これまでの調査データを改めて整理し、学校等を訪問した調査で得た資料や聞き取り調査のデータを分析し、教育政策の検討と合わせて考察を行った。シティズンシップ教育の政策枠組みを中心に「排除性」という視点から分析したものについては、2011年8月の日本教育学会第69回研究大会で発表を行った。また、イングランドの中等学校で実施した調査をもとにシティズンシップ教育の実践と子どもの意思決定への参加に焦点を当てて検討した。その一部を論文としてまとめたものを学術雑誌『公民教育研究』に投稿し、掲載が決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
6月の現地調査ではLTSとNGOは訪問したが、学校を訪れることができなかった。9月に再調査を計画していたが、科学研究費の一部の交付が例年より遅れたことから同研究費による調査はできず、結局自費で渡英し小学校2校と中学校1校で調査を実施したため、研究自体はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は本研究にとって三年目となり、また最終年度となる。イングランドとスコットランドにおいてそれぞれ再調査を実施する予定であるが、これまでの調査・研究結果を踏まえた上で研究課題をより明らかにし、より焦点化した現地調査を計画中である。また、欧州の経済危機によりイングランド・スコットランドの両地域では2011年から教育予算が大幅に削られるという状況にある。特にイングランドは政権が交代し、保守党政権はシティズンシップ教育の廃止を提言している。こうした状況の変化の中で、教育現場がどのような対応を迫られているのか、またシティズンシップ教育の内容にどのような影響が生じているのかについても注意を払いながら研究を進める予定である。
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