研究課題/領域番号 |
22730662
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今田 絵里香 京都大学, 文学研究科, 助教 (50536589)
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キーワード | 異性愛 / 少年少女雑誌 / 男女共学 / ジェンダー / メディア |
研究概要 |
平成23年度は、戦後日本において男女共学が実施されるとともに、少女雑誌『少女の友』は男女交際というテーマをどのように描き出したのかを明らかにした。戦後、男女共学が実施され、中等教育機関において男子生徒と女子生徒がともに学ぶようになった。これは現実世界において生じた変化である。しかし、このような現実世界の変化をどのように解釈するのか、どのような意味付けを行うのかについては、メディアの影響が非常に大きいと考えられる。女子中学生・高校生が接したメディア、とくにもっとも身近なメディアである少女雑誌は、彼女たちに解釈枠組みを与え、意味付けを与えたと推測できる。そこで『少女の友』1930年1月~40年12月と1945年9月-55年6月を(1)小説(2)座談会(3)読者通信欄に着目して比較した。その結果、戦前は(1)小説はエス小説、(2)座談会は少女自身がどう生きるかというテーマ、(3)読者通信欄は少女に宛てた手紙であったが、戦後は(1)小説は異性愛小説、(2)座談会は少年とどのような関係を築くか、(3)読者通信欄はエスを排除し異性愛を肯定する手紙が見られた。すなわち、戦後、男女共学が実施されるとともに、『少女の友』では、男女交際は明朗なものとして称揚され、エスはセンチメンタルなものとして否定、排除された。また、戦前、『少女の友』では、センチメンタリティとそれを表現する文字文化(詩歌、手紙、戦前型少女小説)に価値が与えられていたが、戦後はその価値が徐々に失われていった。そして、戦後、『少女の友』では、少女は「少年とどのような関係を築くか」について興味を持ち、そして始終それに心を砕くことが「少女らしい」身振りになっていった。以上の三点が明らかになった。この成果は第55回大会コロキウム5「男女別学から男女共学へ-セクシュアリティと男女交際-」で報告し、「1945~70年の少女雑誌とジェンダー」(京都大学GCOEワーキングペーパー)にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、『少女の友』という少女雑誌を分析し、少年少女雑誌文化における異性愛主義拡大のプロセスを明らかにし、それを通して戦後のジェンダー秩序と異性愛主義の分かち難い関係を明らかにした。そのため本研究目的を概ね達成しつつあるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き戦後日本の少年少女雑誌文化における異性愛主義拡大のプロセスを明らかにし、それを通して戦後のジェンダー秩序と異性愛主義の分かち難い関係を明らかするとともに、新しく比較の視点も取り入れる。比較の視点を取り入れた研究はまだ充分に達成できてるとはいえないため、今後は欧米の少年少女雑誌文化と比較し、戦後日本の少年少女雑誌文化の特徴を把握することに重点を置いて研究を進める。
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