研究課題/領域番号 |
22730662
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
今田 絵里香 成蹊大学, 文学部, 講師 (50536589)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 異性愛 / 少年少女雑誌 / 男女共学 / ジェンダー / メディア |
研究概要 |
平成24年度は『女学生の友』(小学館)『少年』(光文社)を分析し、少女雑誌文化がどのような論理で異性愛文化を導入したのかを明らかにした。『女学生の友』については特集記事と座談会記事、「サロンTOMO」を1950年4月号(創刊号)から1962年3月号まで分析した。『少年』については特集記事と座談会記事を1946年11月号(創刊号)から1960年12月号まで分析した。分析の結果、『女学生の友』は1956年から小説において、1959年からは特集記事・座談会記事において異性愛を導入するようになったことがわかった。小説の変化のプロセスはエスを排除し、異性愛を導入していくことであったが、特集記事・座談会記事の変化のプロセスは職業獲得に関する記事を排除し、男女交際に関する記事を増加させていくことであった。しかも、このような転換は編集者の独断によって行われたのではなく、読者の熱望によって促進されたものであった。なぜなら、戦後になって構築された男女共学体制は、少女たちに異性とどのようにつきあったらいいのかという新たな難問を突きつけたからである。しかもその難問は男女別学体制しか経験したことのない親世代にとっても解き難いものであった。そのため、少女たちは『女学生の友』に殺到することになったのである。一方、『女学生の友』の編集者・執筆者たちは「正しい男女交際とは明るい男女交際である」という解答を用意して彼女たちを迎えた。明るい男女交際とは何か。それは一つにはグループでつきあうこと、二つには両親の許可を得てつきあうことである。そしてその究極の形が当時の皇太子と正田美智子の「ロイヤル・カップル」であった。しかし、『少年』の特集記事・座談会記事を見てみると、職業獲得に関する記事がほとんどであった。すなわち男女共学の実施は男女に同じ効果をもたらしたわけではなかったのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、『女学生の友』『少年』という少年少女雑誌を分析し、少年少女雑誌文化における異性愛主義拡大のプロセスを明らかにし、それを通して戦後のジェンダー秩序と異性愛主義の分かち難い関係を明らかにした。そのため本研究目的を概ね達成しつつあるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き戦後日本の少年少女雑誌文化における異性愛主義拡大のプロセスを明らかにし、それを通して戦後のジェンダー秩序と異性愛主義の分かち難い関係を明らかにする。それとともに、今後は欧米の少年少女雑誌文化と比較し、戦後日本の少年少女雑誌文化の特徴を把握する。
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