平成25年度は、『少女の友』(実業之日本社)を分析し、読者たちの「読むこと」「見ること」「書くこと」について、明らかにした。『少女の友』は、少女詩・少女小説をふんだんに載せた、少女向け雑誌であった。少女詩・少女小説の作家は、初期に、与謝野晶子、野上弥生子らが、昭和期に、川端康成、吉屋信子、横山美智子らがいた。一方、この少女詩・少女小説に不可欠であったのが、抒情画である。抒情画は、明治期に、竹久夢二、大正期は川端龍子、昭和期に、高畠華宵、蕗谷虹児、須藤しげる、深谷美保子、中原淳一、松本かつぢらがいた。加えてこの雑誌は読者投稿欄も充実させていた。読者投稿欄には、読者の手紙を載せる通信欄、読者の作文・和歌・俳句などを載せる文芸欄があった。このように見てくると、『少女の友』は、文学作品、抒情画、読者投稿欄を中心に構成されていたといえる。そこで、文学作品を読み、抒情画を見、さらにその文学作品を模倣した読者たちに焦点当て、分析を行っていくことにした。その結果、読者は「読むこと」「見ること」をとおして、「少女」を学んでいたことがわかった。「少女」とは、一つに純粋無垢な存在とされていた。それに比べて「大人(とくに大人の女)」は、世の中で揉まれて純真さをなくした存在、醜悪な存在とみなされていた。二つに、文学的能力を高めることに余念のない存在であるとされていた。それに比べて「大人(とくに大人の女)」は夢も理想も失ってしまった存在と表象されていた。そして、読者たちは、「書くこと」をとおして、自己を「少女」に、そして自己を取り巻く世界を「少女の息づく世界」に変えていたことがわかった。すなわち『少女の友』の読者たちは、「読むこと」「見ること」「書くこと」をとおして、「少女」になっていったといえる。
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