研究課題/領域番号 |
22730663
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
黒田 千晴 神戸大学, 留学生センター, 准教授 (30432511)
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キーワード | 東アジア / 高等教育 / 国際化 / 留学生政策 / 国際教育交流 |
研究概要 |
本研究は、東アジア地域における高等教育の国際化の動向として、主として中国、韓国、日本の三カ国の留学生政策、国際教育交流の状況を比較・検証し、東アジア地域の国際教育交流における「競争」と「協働」のメカニズムを解明し、同地域における質の保証を伴った域内学生交流の発展・拡大に向けた課題を明らかにすることを目指す。更に、中国、韓国の高等教育の国際化政策及び留学生政策を分析することを通して、東アジアの高等教育における日本の立ち位置を確認し、日本の競争力を向上させるための国際教育政策の在り方、グローバル人材育成に資する高等教育政策の在り方を模索することを目的としている。2011年度は、昨年度に引き続き、韓国、中国の高等教育政策、留学生政策(派遣・受け入れ)に関する資料、文献を検証した上で、中華人民共和国教育部国際合作司、国家留学基金管理委員会を訪問し、同国の高等教育の国際化に向けた政策、留学生政策(派遣・受け入れ)、高度人材育成戦略等について、政策担当者に聞き取り調査を行った。加えて、中国の国家重点大学である北京大学、清華大学、中国人民大学、そして復旦大学の複数の学院において英語を教授言語とする留学生向け学位プログラムの実施状況について現地調査を行い、政府レベルの政策面だけでなく、中国の高等教育機関における国際化の施策と、留学生教育の実態を検証した。今年度の研究成果としては、中国教育部国際合作司を訪問する機会を得て、中国政府の政策担当者に直接、中国政府の高等教育政策、高等教育の国際化の施策および留学生政策(派遣・受け入れ)について聞き取り調査を行ったことが挙げられる。また、政府関係者への聞き取り調査と同時に、中国の重点大学を複数訪問し、昨今中国で急速な展開を見せている英語を教授言語とする学位プログラムの実態を調査したことにより、政策レベルと大学レベルでは、高等教育の国際化の方向性、意図にズレがみられるということを確認した。これらの点は、文献・資料の検証だけでは確認できず、現地調査を実施してこそ得られる知見である。これらの調査結果は、2012年6月に予定されている日本比較教育学会で研究発表を行う。また、2012年に出版予定の2冊の共著にも、本年度の研究成果の一部を発表する予定である。なお、2011年には、2010年度の研究調査の成果を、2011年5月にComparative and International Education Society,USA,the 55th Annual Conferenceにおいて、また同年6月に開催された日本比較教育学会第47回大会、同年11月の私学高等教育研究所第50回公開研究会においてそれぞれ研究発表を行った。また、ウェブマガジン『留学交流』、『国際教育』で研究成果の一部を論文として発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、中国教育部国際合作司を訪問する機会を得て、中国政府の高等教育の国際化に向けた政策方針、留学生政策(派遣・受け入れ)及び留学生教育制度改革等について聞き取り調査を実施することができた。また、国家留学基金管理委員会も訪問し、中国政府の国費留学生政策(派遣・受け入れ)について聞き取り調査を実施した。また、当初計画を前倒しして、中国の複数の重点大学において、英語を教授言語とした学位プログラムに関する実態調査を実施した。スケジュール調整の関係で、今年度予定していたアメリカ合衆国における孔子学院の追加調査及び韓国の大学の大学における追加の聞き取り調査は、来年度実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果を踏まえ、2012年度は、中国の主要大学における国際化の動向、留学生教育、英語を教授言語とした学位プログラムの実施状況に関する聞き取り調査を継続して行う。更に、キャンパスアジアの選定校を中心に、中国、韓国、日本の大学間における質の保証を伴った教育交流の拡大に向けた課題を明らかにすることを目指す。また、急速な拡大がみられるアメリカ合衆国における中国の対外中国語教育の展開に着目し、アメリカ合衆国における孔子学院の訪問調査を行う。2012年度は、本研究課題の最終年度に当たるため、これまでの研究調査の結果を総括し、東アジアの高等教育における日本の立ち位置を確認し、日本の競争力を向上させるための国際教育政策のり方、グローバル人材育成に資する高等教育政策の在り方を検証する。
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