研究課題/領域番号 |
22730665
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
太田 美幸 立教大学, 文学部, 准教授 (20452542)
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キーワード | 成人教育 / 民衆教育 / スウェーデンモデル / 職業訓練 / 教育政策 / 文化政策 / 文化運動 |
研究概要 |
本研究は、スウェーデンモデルの成立過程において、成人教育関連政策がいかなる社会的・政治的・経済的・文化的課題に対峙するものであったのか、スウェーデンモデルのなかで民衆教育・成人教育がどのような機能を期待されてきたのか、その結果どのような成人教育システムが形成されたのかを明らかにすることを目指すものである。本年度は、(1)文化運動・文化政策に関する調査、(2)職業訓練・職業教育に関する調査をおこなった。 (1)について、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したカール・ラーション、アルトゥール・ハセリウス、グスタヴ・アンカルクローナらの活動と、その背景にあったナショナル・ロマンティシズムについて検討した結果、民衆教育に大きな影響力を発揮したエレン・ケイの教育思想と、上記の思想潮流および文化運動の接点を見出すことができ、建築や工芸の領域における北欧新古典主義から機能主義への流れの中に、民衆教育・成人教育の理念を位置づけることが可能ではないかという仮説を得た。上記の文化運動がいかなる回路で民主教育におけるアマチュア文化運動につながっていったのかを明らかにすること、それに基づいて1960年代以降に白熱化した文化政策の議論を解釈することが、来年度以降の課題として浮かび上がった。 (2)については、労働市場政策と結びついた成人教育の制度化過程を確認するとともに、ノンフォーマル教育機関としての民衆大学にいかなる期待が寄せられたのか、民衆大学によるそれへの応答がどのような変遷をたどったのかを明らかにすることによって、スウェーデンの福祉国家形成過程において民衆教育が果たしてきた機能について検討した。民衆教育機関における職業教育は、20世紀後半の労働市場政策において積極的な位置づけを与えられてはこなかったが、福祉サービス職養成および地域文化活動の振興の領域において重要な役割を果たしてきたことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査を進めるにしたがって、当初の研究計画には含まれていなかった作業をおこなう必要が明らかになり、時間配分にやや苦慮しているものの、適宜工夫しながらほぼ予定通りに研究を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画を立てた時点では、20世紀後半の文化政策の基盤となっている文化運動の展開についての調査を計画に盛り込むことができていなかったため、来年度の計画を若干変更し、上記の領域の調査を中心に実施することとしたい。民衆教育・成人教育を文化政策の文脈において理解することによって、スウェーデンモデルの政策リンケージの中に成人教育を位置づけるという本研究の目的により接近することができると思われる。
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