スウェーデンモデルにおける成人教育システムは職業訓練制度、公的成人教育、民衆教育の3つの領域が複雑にからみ合って成立した。スウェーデンモデル形成期にあたる1930年代以降、ノンフォーマルな民衆教育が職業訓練制度の不備を補完する形で機能を拡大し、1960年代の公的成人教育の制度化を準備した。各領域の境界は当初から曖昧であり、それが成人教育システム全体の複雑さと柔軟性を生んだといえる。パルメ元首相の「学習サークル・デモクラシー」言説に見られる民衆教育観は実態を適切に示したものとは言い難いが、民衆教育と民主主義を結びつけるこうした認識もまたスウェーデンモデルの一部を構成していたといえる。
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