研究2年目であり最終年度である今年度は、保護者による「教育参加」の概念を整理しその一形態として「学校参加」を位置付けた上で、それが児童の成績や教師の教育専門家としての行動に及ぼす影響について、理論及び実証の両面での研究を取り行った。 【理論研究】(1)教育の分権化として先進国途上国問わず保護者による学校参加は導入傾向が認められる。その効果測定の研究蓄積もされてきているが明確な結論が出ているわけではない。その原因を端的に指摘するならば、集権化一分権化は相対的な指標であることを挙げる。すなわち一国の中では時間的空間的比較が必要であり、複数国であれば国の人口・国土・経済力の規模の比較が必要である。さらに、教育の分権化の効果測定には、従前の教育制度の成熟度(ここでは教育行政の機能度合い・これには教員の質も含まれる、教育財政の規模、それらが複合して生みだされる生徒児童の学力から構成する)も勘案する必要がある。先行研究ではこれらの視点が抜けている。(2)そのため分権化した事実と数年後に生みだされた生徒児童の学力との関連性について有意な統計的データが検出されたとしても、その間に存在する経路はブラックボックスのままである。 【実証研究】2011年8~9月にボリビア・コチャバンバ市の小学校10数校の教員にインタビュー。そのうち学校委員会にインタビューできたのは1校のみ。よって2012年4月現在は011年2~3月でのインタビュー学校委員会7校分を合わせた8校での分析を進めているところだが途中経過で明らかになったと点は次のとおり。(3)小学校委員会が持つ教員の配置転換(異動)の権限は特効薬とはならない。(4)教員と親との対立は児童へ影響する。(5)すなわち、保護者の学校参加によって教員の教育実践や専門家としての行動が必ずしも期待された望ましい方向に変化するわけではない。
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