本年度は、昨年度に引き続き先行研究及び基礎的情報の整理を行うとともに、複数のボーダーフリー大学で教員に対するインタビュー調査と並行して、学生に対する調査も行った。 まず、先行研究及び基礎的情報の整理については、ボーダーフリー大学におけるアカデミック・プロフェッションの問題に限らず、ボーダーフリー大学に関連する先行研究・調査の収集を逐次行った。また、教育関連産業の発行する進学情報等を用いて、ボーダーフリー大学に関する基礎的情報の整理を行った。ボーダーフリー大学に関する研究蓄積が十分でない現状に鑑みれば、こうしたデータベースを整備することには大変大きな意義がある。 教員に対するインタビュー調査については、複数のボーダーフリー大学において、当該大学の教員を対象に、教育・研究活動の実態や困難についてのインタビューを行った。また、当該大学の学生を対象に、当該大学の実態や大学・教員に期待すること等についての調査を行った。こうしたインタビュー調査によって得られた分析枠組みのもと、研究代表者も参加する共同研究において実施した、アカデミック・プロフェッションに関する全国規模の大規模調査のデータを用いて、量的な分析を行った。この分析から、アカデミック・プロフェッションに期待される主要な役割である「教育」と「研究」の両立を阻む要因を、研究志向の教員については明らかにできたが、教育志向の教員については十分明らかにできなかった。このことから、教育志向の教員は「教育」と「研究」の両立という大学教授職の理念に疑問を呈している可能性が示唆された。大学教授職の使命・役割・機能の再構築の問題について考える上で、教育志向の教員に焦点を当てた研究が重要であることをデータの裏付けをもって示したという点で、本研究には大きな意義があると考える。
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