(1)私立大学を対象とした質問紙調査の分析と事後調査 私立大学を対象に実施した機関質問紙調査を分析し,また,これを踏まえた事後調査を実地訪問(7大学)および電話(14大学)により実施した.これらの結果,以下のことが指摘できた.①昇給と賞与支給に対して教員の活動や業績が影響を及ぼさない給与制度をとっている私立大学が多数派であり,歴史のある大学については特にそうであった.こうした給与制度の特徴は,教員が給与への直接的な影響を気にすることなく,裁量が任された時間を内発的動機づけによって教育・研究等の諸活動に費やすことを許すものといえるだろう.②一方で,少数派であるが一部大学で業績等の評価を給与に反映させていた.これは,大学が教員に望む働きぶりと教員の自律的活動との間の調整を図るためという側面があると思われ,その反映には「教育活動」や「管理運営」が,「研究活動」と同等以上に影響をもつ傾向がうかがえた. (2)国立大学部局長等を対象とした質問紙調査の実施と分析 国立大学の学部/研究科長および学科/専攻長を対象とする質問紙調査を行った.その結果,以下のことが指摘できた.①昇給幅や勤勉手当支給率の決定に際しては,「研究業績」「教育業績」「組織運営への貢献」が重視され,「年功・年次」はそれほど重視されない.②昇給幅や勤勉手当支給率の決定への影響度については,「部局長の判断」が最も影響がある一方,「学科等長による推薦や判断」の影響度は低く,選考会議等の合議体の影響度も低かった.③業績や勤務成績等の評価に関する問題として,「短期評価は困難」「意欲低下が危惧される」が比較的強く認められる一方,「部局長による教員評価は大学の文化に馴染まない」とはあまり認識されていなかった.
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