(1)国立大学を対象とした訪問調査 過年度に引き続き,2つの国立大学の人事担当部署等を実地に訪問し,教員給与制度についてインタビュー調査を行った.昇給幅と人員分布率,あるいは勤勉手当成績率と人員分布率等が概ね国家公務員に準じて給与規則に定められている現状を確認するとともに,勤務成績評定のプロセスなどの規則上は必ずしも明記されていない内容を聞き取ることで,国立大学部局長等を対象とした質問紙調査の分析とあわせて,実態解明に寄与する成果を得た. (2)外国研究 比較の視点を導入することで分析枠組をより豊かなものにすることを意図して,アメリカを中心とした外国の大学教員給与について資料・文献研究を行った.また,資料・文献の理解を深めるため,一事例としてハワイ大学事務局を実地に訪問し,本部人事責任者および各キャンパスの人事担当者たちにインタビュー調査を行った.その結果,以下の知見を得た.①業績給部分の決定に際しては学科長や学科委員会が関与し,同僚性・専門家自治の尊重がみられた.②特定の専門分野では,優秀な人材確保のため,労働市場の価値を反映させて他分野に比べて給与水準を高く設定していた.昇給に際しても,業績のみではなく,市場価値の反映が考慮される余地があった.③キャンパスによって大学のミッションが異なることを反映して,教員の給与水準がキャンパスごとに異なっていた.以上の特徴は日本にはみられないものであり,大学教員給与のあり方を考察する視野を広げることにつながる成果であった.
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