本研究は、オランダにおいて教育の自由がいかに保障され、また教育の質保障のメカニズムがいかに機能しているかを明らかにすることを主な目的とするものである。これを達成するための具体的な手続きとして、オランダの教育監査制度や多様な教育実践を整理した後、質保障メカニズムにおいて中心的な役割を担っている教育監査局の位置づけを明らかにすることを研究主題として据えた。 平成23年度は、オランダの教育監査局を研究対象として分析するにあたり、制度的・政策的観点から分析を進めた。前年度までの研究により、教育監査局の機能的・法的な役割が明らかになった。そのため、前年度までの成果を下敷きとしながら、教育監査局内外の制度的側面を明らかにし、教育監査局のみならず教育監査や教育評価にも直接的な影響を与えている政策的な側面もあわせて質的に分析を行った。 上記の分析の結果、本研究により、教育監査局が中心となって行うオランダの教育監査が、制度的に変容している可能性があることが明らかになった。変容の可能性を示す具体的な事例として、2004年度から掲げられている「重点実施の原則」による監査の効率化や学校負担の軽減の方向性、2007年度以降の「リスク分析」導入にみられる各学校の自己評価活動の重視などを挙げることができる。 これらの変容により、オランダの教育監査が、「すべての学校を対象とする一律的な監査」から、「質の低い学校に対し集中的に資源を投入し改善へと導くための監査」へと質的に変化を遂げつつある点を指摘した。監査の質的な変化により、オランダの質保証メカニズムにも相応の変化が出てくることになる。
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