23年度に行う教育行政施策の実態を明らかにするための質問紙作成のため22年度は、(1)外国人集住地域における外国人住民に対する教育行政施策の整理、(2)外国人学校が果たす役割の検証、(3)国境を越えて移動する外国人の子どもの現状把握、の3点を実施した。以下、上記の番号順に具体的内容と研究成果について記述する。 (1)については、外国人集住都市会議参加都市である岐阜県可児市と愛知県小牧市を対象にしたケーススタディを行い、調査結果については各市における多文化共生推進プラン検討時の基礎資料として活用し、年度末には多文化共生推進プラン策定と繋がった。 (2)については、(1)の地域において最も外国人登録者数の多いブラジル人が通う国内最大数となったブラジル学校について課題整理を行った。その結果、学校保健の対象でないブラジル学校において子どもの健康を守る仕組みづくりの緊急性が明確となった。そのため、岐阜県内の中濃地域に所在するブラジル学校をパイロットとし、岐阜県および美濃加茂市の協力を得て、ブラジル学校における健康診断の方法と健康診断問診票等の開発、他校で応用可能な学校健診の手法を目的とした研究を実施した(なお、本研究については、23年3月8日のNHKニュースにて報道されたほか、2011年3月9日岐阜新聞、3月10日中日新聞に掲載された)。 (3)については、日本から帰国した子どもと家族を対象にした現地調査および資料収集のため、9月2日から20日までの間、ペルーを訪問した。その結果、移動する子どもにおいての無国籍状態に置かれた実態が明らかになった。そのため、無国籍の課題に取り組む国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所の協力を得て、「無国籍状態の子どもの人権のゆくえ-成育・教育保障を考える」と題して22年12月18日に本学(愛知淑徳大学)にてシンポジウムを開催し、そのなかで本研究成果について発表した。
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