本研究は、高等学校中途退学経験者の社会階層的特徴および高校中退メカニズムを把握することを目的としている。 平成22年度は、大規模社会調査データを用いた計量分析(定量的調査)を中心に研究を進めた。計量分析のために用いた個票データは、2005年に日本全国の20歳から69歳の男女を対象に実施された『社会階層と社会移動全国調査(2005年SSM調査)』である。探索的な計量分析の結果、低所得層ほど高校中退リスクが高いことが判明した。ただし、世代によって出身家庭の経済力が高校中退に及ぼす影響力は異なり、若年層になるほど、出身家庭の経済力が高校中退におよぼす影響力は低下している。その結果、若年層になるほど、学業成績などの個人的要因が高校中退におよぼす影響力が高まっている。これらの研究成果は、分析結果の妥当性を検証するために、福岡大学で開催されたセミナーで報告した。現在、会場から得られたコメントを参考に、学術論文を執筆中であり、平成23年上半期中の完成を目指している。 さらに、平成22年度下半期には、インターネットリサーチ会社を通じてインタビュー調査(定性的調査)の協力者を募るリクルーティング調査を実施した。サンプルの抽出方法は、年齢が20歳から45歳の男女であり、居住地で層化した。調査の結果として回収されたサンプル数は、合計95名である。 平成23年度は、これらの調査協力者に対して、インタビュー調査を継続的に実施し、高校中退者の社会階層的特徴の把握と分析フレームの吟味を深めることを研究課題とする。
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