本研究は、高校中退要因のメカニズムを社会階層論の観点から解明し、中退研究に新たな地平を開くことを目的としている。 平成23年度は、平成22年度下半期にインターネット調査会社を通して実施したリクルーティング調査で得た調査協力者(高校中退経験者)に対してインタビュー調査(定性的調査)を実施し、高校中退経験者の社会階層的特徴の把握と分析フレームを深化させることを研究課題としていた。 しかしながら、東日本大震災の発生とその後の国内の混乱により、上半期に東日本地域でインタビュー調査を実施することは困難な状況にあった。そこで、上半期は西日本地域在住の調査協力者を中心にインタビュー調査を実施し、東日本地域在住者に関しては、下半期よりインタビュー調査を実施することとした。なお、インタビュー調査では、計量分析(定量的調査)では捉えることの難しい親子関係を中心に聞取りを行なった。 インタビュー調査の結果、世代、地域を問わず高校中退経験者の家庭に共通する特徴として、子どもの選択(意思決定)を尊重する親が多く、高校中退時に親が「引き止め役」として機能していないことが判明した。特に、親が子どもの養育に割ける時間が限定されるひとり親世帯では、こうした傾向が顕著であった。この結果から、高校中退者を減少させるためには、ひとり親世帯の子どもに対する経済的支援のみならずカウンセリング等の心理的支援を含めた包括的な支援体制を構築することが必要であることが示唆された。
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