本年度は国内の大学への聞き取り調査などを行う予定にしており、インタビューを中心とした小規模な調査を行った。また3年間の研究の総括を行った。対象は、地方中堅大学における研究費獲得戦略および研究活動についてであった。この件については近畿地方にある大学の教育系学部の学部長および若手研究者にインタビューを行った。学部長として教育重視の大学においていかに研究の重要性を事務組織に浸透させるか、それによっていかに研究時間、資金などを確保するのかについて中心的にインタビューをした。地方の中堅私大では特に大学という文化がどういうものであるかを理解してもらうこと、研究をすることが長期的には教育にもよい影響を与えることを理解してもらうことが肝要であるとの答えがあった。若手研究者からは若手故に授業を多く持ちながらも研究をするためのさまざまな戦略、方策について調査した。そこでは教育の重要性を認めながらも研究がそれに与える影響の大きさについて、いかに大学組織が共有するのか、また研究と教育のバランスを個人だけでとるのではなく、大学内で機能分化させることの重要性について強調していた。 3年間の総括としては、大学の機関レベル、システムレベルのガバナンスと研究の関係について、組織論やガバナンス論の成果を利用しまとめた。特に政治学や行政学で取り入れられているパブリック・ガバナンス論の観点を取り入れることによって、政府やそれを取り巻くステークホルダーとの関係を理論的に構築できる可能性があり、大学も組織である以上、組織の持つ一般性、普遍性の観点から検討して得られるべきであると論じた。またガバナンス論の適用から得られた結果が他分野のガバナンス論を深めたり、向上させたりすることにつながる可能性もあることを指摘した。
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